「大学院教職研究科におけるオンライン授業の実施とその効果」
20.06.08
1.大学院生を迎えるにあたって
聖徳大学の教職大学院には2つのコースがある。1つは、学部において幼稚園教諭免許状を取得し、さらに専門的で実践的な指導力の向上を目指して入学した院生と現職の幼稚園教諭等がさらに専門的で実践的な指導力の向上を目指して学んでいる幼児教育コースである。もう一つは、学部において小学校教諭免許状を取得し、さらに専門的で実践的な指導力の向上を目指して入学した院生と都県の教育委員会から長期研修制度のもとで派遣された現職の小学校等の教諭等が学んでいる児童教育コースである。それぞれのコースでは、自己の専門性を高めたいという動機で入学された方から校長や園長といった管理職を目指す方までさまざまな院生が学んでいる。両コースの大学院生が机を並べて日々接することで、異校種間の教諭の考えに触れることで、お互いの視野を広げる機会を得られることが本大学院の特徴の一つとなっている。
ところで今年度は、児童教育コースに4名、幼児教育コースに6名の入学者があった。例年、学修がスムーズにいくように、入学時に研究テーマと正副の指導教員を決める説明をすることになっているが、今年度は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて入学式が中止になり、説明の機会をもつことができなかった。
そこで、各院生の自宅宛に、自身の研究の課題を決めるにあたり参考となる資料(過去の大学院生の課題研究の例や本学の教員の紹介など)を郵送し、指導を受けたい教員希望を決め、その後、希望する複数の教員と電子メールなどでやり取りをしながら、その構想を固めてもらうようにした。その結果、子どもの自主性の育成に関する教科の専門性を高める課題や若手教員の育成に関する管理職としての在り方に関連した課題などが、例年通り、期限までに提出されるに至った。
2.5月7日(木)に開催したオンライン新入生ガイダンス
オンライン授業が開始されるにあたり、その前日の5月7日(木)にオンライン新入生ガイダンスを開催した。具体的には、1年間及び2年間長期研修制度等のもとで派遣されて入学した4名の児童教育コースの新入生に対しては13時から、業務を続けながら、業務が終了してから夜間(18時から21時10分)の時間で学修する6名の幼児教育コースの新入生には18時から、それぞれTeamsを用いたオンラインでの新入生ガイダンスを行った。研究科長や両コースの主任、両コースのアドバイザー教員、授業担当教員、大学院の事務担当者が参加した。そこでは、入学者、教員、事務担当者が全員、簡単な自己紹介をオンラインの動画上で行なったため、全員がほぼ初対面でありながら、和やかに親睦が図られた瞬間であった。このような雰囲気を受けて、郵送で送られた書類等に関して不明な点を気軽に質問でき、また教員からの回答を入学生が皆で共有するなど、入学生たちは一同に安心したようであった。本来なら大学の教室でガイダンスが行われるはずであったが、それと同様のガイダンスをオンラインで実施することができた。これも、ひとえにオンライン新入生ガイダンスの呼びかけに応じてくれた新入生の物的環境と心構えの準備、及び通信環境の整備等に尽力された職員の方々のご努力の賜物であるといえよう。
今回のガイダンスの開催にあたっては、入学者の通信環境に違いがあったため、両コースのアドバイザー教員が一人ひとりに対するオンライン会議システムに接続するための情報環境整備に関するきめ細かな事前の指導があった。したがって、ガイダンス当日、画面上に、入学生と教員の全員の顔が登場し、接続が確認できた瞬間には、期せずして拍手が沸き起こったほどであった。
3.5月8日(金)からのオンライン授業
聖徳大学では、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から学生たちの通学を控えていただいた。そこで、学生たちに対する教育として、全学をあげてオンライン授業を実施することになった。教職研究科もこの方針の下、院生が通学する代わりに、全授業をオンラインで行うことになった。
オンライン授業では、リアルタイムの授業はTeamsというWeb会議システムを、オンデマンドの授業はMoodleという授業システムを、そのほか教員との個別のやり取りは大学のメールアドレスを全学生に配布して電子メールを用いて行なった。
このような中、授業の資料を事前にオンラインで院生に配布し、授業中もファイル共有機能を活用して資料を画面上に提示しながら、参加した院生全員から意見を求めるかたちで授業を行うことができた。またオンライン上で、院生同士のディスカッションを展開する場を設けることもできた。また、幼児教育コースの院生と児童教育コースの院生のディスカッションを大切にしているとの声があった。
1対1で行ったオンライン授業では、現場での経験事例の提示を巡って教員との深い意見交換がなされ、その結果、「児童を認知特性という枠組みで捉えなおすことが面白くなった」との大学院生の意見が出たとの報告もあった。
以上のように、オンライン授業は、大学の教室における対面授業と概ね同等の教育効果をあげることができていると担当教員たちは感じており、院生たちも概ね満足しているとの声が聞かれた。実際、パソコンのカメラの位置からか、教室内よりも顔がアップで見られ、より親近感が増し、質問もしやすい雰囲気になっているとの報告もあった。
一方、デメリットとしては、大量の資料の印刷を自宅で行わなくてはならなくなっているとの声や、事前の資料の読み込みなど課題の量が多く、受講を希望している全ての授業についていくのが大変であると声も聞かれた。
4.これからのオンライン授業
今回、コロナウイルス感染対策の一環として、自宅におけるインターネット環境の整備を入学生と在学生の全員に強いてしまった感は免れない。しかし一旦整備されれば、遠方に住んでいる学生にとっては、大学まで通学する必要がないというメリットがある。
聖徳大学の場合、児童教育コースの院生は県や都から1年間及び2年間の長期研修が認められており、いつでも大学に通って学ぶことができる。一方、幼児教育コースの院生の多くは、幼稚園等での業務を行いながら通学する形態である。このような場合、コロナ感染対策の一環としてではなく、忙しい業務の合間に授業を受けられる機会を増やす意味で、今回のオンライン授業は重要な試金石になるものと思われる。
このことから、現在実施されているオンライン授業の効果と問題点を十分に検証し、学生たちからの声も十分に収集した上で、今後のオンライン授業の活用のあり方を検討していきたいと考えている。
令和2年6月6日
幼児教育コース主任 古川 寿子
児童教育コース主任 久保田健夫