教職研究科 │ 聖徳大学

学びの夏2023 聖徳大学特別支援教育未来創造研究会「夏期講座」

23.09.19

 令和3年度より始まった聖徳大学特別支援教育未来創造研究会も3年目を迎え、今年度初めて「夏期講座」を8月23日(水)、24日(木)の二日間実施しました。大きなテーマとして「みんなでWell-beinngを考えましょう」ということで、障害のあるなしに関わらず、「Well-being」であることを目指したいと考えたテーマです。

「Well-being」ということば、OECD Education2030において示された用語です。様々な訳語が使用されていますが「満たされた状態」(前野)が適語でしょう。障害がある子もない子も、みんながWell-beingをめざすことが教育の本来の目標かもしれません。実際の様子を紹介します。

まず、第一日目。

江戸川区のパラスポーツの取組は、昨年度、児童学科の4年生が卒業論文で「パラスポーツ」をテーマにしたことで、先進的な取組みを行っていることを知り、多くの人に知ってほしいと思い設定した企画です。実際、松戸市から担当課の方も参加し、終了後名刺交換し話込んでいる様子も見られました。2020パラスポーツで実施された22競技が江戸川区内で体験できるようになっていること。民間活力の利用等、これからめざすべきパラスポーツの方向性を示唆していただける内容でした。

千葉県立高等特別支援学校流山高等学園親の会から一般社団法人となった「KOYOクラブ」の取組が紹介されました。余暇支援としての6つのクラブ活動の定期的継続的な活動とともに、本人を対象としての働き続けるために「学ぶことの必要性」から、災害から身を守る、アンガーマネジメント、スマホ安全教室等様々な企画の紹介がありました。

その後、本学の河村久教授から「障害者の生涯学習の推進上の課題と対応」についての話題提供がありました。その中で京都ノートルダム女子大学矢島雅子先生の「成人期の障害のある人の日中活動の現状と課題」から「成人期の障害者が利用する生活介護事業所における日中活動支援について、どんな課題があるか」が紹介されました。その中で「親の役割意識として、代弁者となっている親、親の世代間意識の違い、親の役割が終了しない」の内容にKOYOクラブの方々が大きくうなずいていたことが印象的でした。

午後は、ゆたかカレッジからの「知的障害者の高等教育保障」ということで話題提供がありました。海外における知的障害者高等教育保障の現状、知的障害者の社会自立における現状と課題等、日本において課題が多いことを実感させられました。参加者からも驚きのことばも聞かれました。生涯学習をサブテーマとして進めていく中で、現状の特別支援教育の在り方に対する意見も出され、二日目のサブテーマ「インクルーシブ教育」につながる討論会となりました。

次に、第二日目。

最初に、「小学校における通級による指導」について東京都の小学校における特別支援教室の実践が示されました。特別支援教室という制度の導入に伴い、『子供が動く』から『大人が動く』に変わり、巡回指導の拠点校方式で実施されていることが紹介されました。特に足立区においては小学校67校すべてを拠点校としていること、その実情は区によってことなることなど参加者が関心を持って聞くことができました。

二つ目として、「中学校における通級による指導」について松戸市の中学校の実践が紹介されました。松戸市においては中学校3校で通級による指導が実施されていること。めざす教室の姿として、「認められる教室」「挑戦できる教室」「安心できる教室」であること。通級指導教室の教育課程などが示されました。

三つ目として、「高等学校における通級による指導」について千葉市の高等学校の実践事例が紹介されました。通級開始に向けての取組から、千葉県内における通級による指導実施校のこと、指導生徒の事例等具体的な話題提供となりました。また数々の実践事例から、二次障害を防ぐためにどうしたら良いのか等の提案もあり、中学校時期からの対応の大切さが示されました。

小学校、中学校、高等学校とそれぞれの充実した実践を聞く中で、合わせて各学校において担当者任せになっていないか、市として、区としての、人的な体制の充実が課題であると思われました。

午後は、「インクルーシブ教育を考える:イタリアのインクルーシブ教育に学」ということで国立特別支援教育総合研究所名誉所員の大内進先生の講演です。話しの中で、イタリアの教育のベクトルと日本の教育のベクトルは真逆です。との話しがあり、昨年来の国連と文部科学省の対応のかみ合わなさを思い出してしまいました。でも、これから少しでも何かできないか、運用上の工夫できること等意見を出し合い、今後の実践に反映できそうかヒントをいただき、参加者も終了後もあちこちで意見交換をする姿が見られました。

参加者からメールで感想が届きました。「夏期講座2日間お世話になりました。学び多き時間でした。障害者の生涯学習、インクルーシブ教育といろいろな気づきがあった2日間でした。特に麻生支援学校のワークコース、アートコースを選択して、アートコースの音楽コース、芸術コースは作業学習をしないとの斬新な取組の紹介。特別支援学校の高等部は、特別支援学校ではなく、高等学校として一括りにしてしまえばいいのではとの意見、清水先生のみらいの学校構想も面白かったです。今後共学び多き未来創造研究会で学ばさせていただきます。」

二日間の大きなテーマとして「みんなでWell-beinngを考えましょう」ということで、障害のあるなしに関わらず、「Well-being」であることを語り合いました。障害のある人に関わっている方々の参加がほとんどでしたが、これをさらに広げていくことが大きな課題であることを感じた夏期講座でもありました。しかしながら、参加者からは、他の先生方にも伝えていきたいという声も聞かれましたので、夏期講座の意義はあったと思われます。(文責 堀子 榮)

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